May 10, 2024

キリストとともに

聖家族と聖ベネディクトの戒律とともに歩む

「バチカン」への誤解あるあるトップ5

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お元気ですか。しぇるりんです。(^ ^)

古今東西、知らない人に猜疑心を持ち、差別する人は世界中にいましたが、今の日本では、何かに「世界の陰謀集団」のレッテルを貼りたがる人が増えています。

いわゆる「ユダヤ系アメリカ人のお金持ち集団」「イルミナティ」、ちょっと古いところだと「フリーメーソン(正確な団体名はフリーメソンリー)」など、富裕層や男性限定の秘密集団めいた諸団体、および秘密結社などが何らかの「陰謀集団」とみなされているようです。

日本の安倍総理の周辺人士が所属するといわれる「日本会議」も十分に「草の根秘密結社」ですが、実態はイマイチ不明です。

さて、日本ではなぜか「バチカン」も「陰謀集団」だと思い込む一部の右派人士がいるようです。

「バチカン」を「陰謀集団」だと思い込んでいる方々の誤解あるあるトップ5を分析してみました。

1.「バチカン」は宗教政治の陰謀集団?

「バチカン」いわゆる「ローマ教皇庁所在地」は、1929年2月11日に教皇ピウス11世と当時の首相であったムッソリーニが「ラテラノ条約」を結んだ時から「バチカン市国」となり、イタリア政府とは別個の外交権を持つ宗教国家となりました。

本来は、ローマ時代までさかのぼる使徒伝承の教会群のあるイタリアのローマ市の一部です。現在も、水道、電気等のインフラ供給はローマ市より提供されています。

国民は800-900名ぐらい。バチカン市国国籍を持つ人のほとんどがバチカン市国内に居住する必要のある修道士、修道女、および常駐のスイス衛兵などです。

小さな国ですが、一応「国家」なので内政は「国務長官」が行い、首長はコンクラーベで選出されたローマ教皇です。

ローマ教皇が亡くなると、コンクラーベを主催する選挙管理委員長役である「カメルレンゴ」が、世界中の80歳以下の「大司教」「枢機卿」と言う各地域、国の「教区、大教区の長」で、教皇被選挙権を持つ人々をローマに招集します。

今回の教皇フランシスコの時には、「ファイルのようなものを授与し、コンクラーベ会場に入場する」シーンが世界中に放送されました。

世界中の枢機卿、大司教は数百人いるため、お互いのことを深く知りません。ファイルの中書かれているのは、厚さ的にみて、被選挙権者である枢機卿、大司教の名前(世俗名、修道名など)のリストなのかも知れません。

「コンクラーベ」を「根比べ」と揶揄するカトリック信徒がいるぐらい、ここから何回も選出作業が行われるのです

膨大な名前のリストとおぼしきものの中から、「教会の祈り」と呼ばれる1日のお勤めと観想の祈りのうちに、次期教皇としてキリストが望まれる人の名前を選ぶようです。

枢機卿ら被選挙権者の2/3が「数百名いる中の誰か一人」に投票した時、「その誰か」が新教皇に選出されます。そして本人が「私は教皇になります」と受諾すれば決定、という手順です。

黒い煙が上がると「選出不成立」、白い煙が上がるとサン・ピエトロ広場に「ビバ・パパ!(教皇万歳!)」の叫びが一斉に上がります。

そして、白い煙の1時間ほど後、新教皇が挨拶と「教皇として自らが定めた称号」を発表する、という次第です。


今の教皇フランシスコを個人的に知っている枢機卿は、南アメリカ大陸の近隣諸国以外では殆どいなかったようです。

もしも、バチカンが宗教政治の陰謀集団なら、イタリア、フランスなど、もう少しメジャーに知られた国の人が選出されるだろうし、新聞記者らが予測できるはずではありませんか?

コンクラーベの際、欧州各紙の予測は当たったためしがありません。なぜなら、新聞各紙の予測は「自国民が望む人」か「政治的に手腕のある人」を予測候補にする傾向があるからです。

以前、横浜教区の司教だった濱尾司教がバチカンで外国人移民担当枢機卿になった時、日本でも「日本人初のローマ教皇誕生か?」とささやかれたことがありました。

その時のコンクラーベで選出されたのは、ベネディクト16世でした。

バチカンはその首長じたい、政治的な思惑に何ら関係なくカトリックの教えと祈りによって選出されます。

間接的に「紙の上でカトリック教会の倫理を重んずる国」では、あたかも政治力があるように言われることが多いのですが、バチカン市国そのものは、陰謀を自ら行う経済力や政治力と無縁の、ローマ教会の本拠地です。

2. バチカンとアメリカは陰謀で結びついている

このような内容は、海外小説にもあるぐらいなので、つい「ホントじゃないか?」と思いたくなるかも知れません。

ちなみに、小説では「CIA要員がカトリック司祭になる」という設定のものを読んだことがあります。これなら可能かも知れませんが、表立って司祭以上の活動が出来るかは疑問です。

宗教家は、相手のウソだけでなくその内面を見通せるだけの深さが必要なオシゴトです。その上、カトリックには告解を定期的に行う義務、告解を聴いた内容への守秘義務があるため、CIA要員の方を続けられない可能性もあるでしょう。諜報活動のためなら、CIA要員などが身分を隠して、情報提供が受けられそうな司祭の元に、熱心な信徒のフリをして通った方がよっぽど効率的でしょう。

現実のところ、米国の歴代大統領でカトリック信徒は、暗殺されたJ. F. ケネディーただ一人。

一般的に米国で弁護士資格を得て、政界のトップを目指す際、宗教の転向を望むなら、米国で勢力のあるメソジスト派、長老会派、米国発の穏健プロテスタント諸会派の教会を選ぶのが妥当です。大統領とその側近の殆どが、少なくとも紙の上ではプロテスタント(新教)信徒だからです。

カトリック信徒でいると、出世コースから外されやすいアメリカ政府の要人の誰かがバチカンと陰謀を企てるというのは、日本人特有の妄想なのかも知れません。

3.「バチカン」ではヒットラーの「我が闘争」を読む?

これは、フェイスブックのとある人物が言い出したことなのですが、ヒットラーとて20世紀のドイツ人だし、修道会学校を卒業しているので「紙の上ではカトリックの洗礼」を受けていたはずです。

その後、カトリック教会から公式に破門されてもいないので、「紙の上ではカトリック信徒」なのでしょう。

カトリック、プロテスタント、ともに教会で冠婚葬祭を行えるのは「信徒限定」です。カトリック教会内に先祖代々の墓地がある人も欧米には大勢いるため、当然「葬式カトリック信徒」の数も膨大です。

日本の葬式仏教徒がお釈迦さんの教えを信じているわけではないように、葬式カトリック信徒もキリストさんの教えを信じておらず、国語や文学の時間に習った以上のことはなにも知りません。

日本の葬式仏教徒との唯一の違いは、葬式カトリック信徒も、日本のお宮参りに当たる幼児洗礼を受けるためには、一定期間親が教会に通う必要があることです。また、教会で人並みに葬式をして欲しければ、少なくとも年に2~3回は所属教会に家族の誰かが顔を出し、一定額以上の献金をすることが求められているため、必然的に年に数回はお説教を聞くハメになるということだけです。

バチカンの関係者が読むのは「聖書」と「キリスト教の伝承や諸聖人聖女の記した書物」などの中でも、専門性の高いものばかりでしょう。

日本の葬式仏教徒にも殺人者、陵虐者がいるように、「紙の上ではキリスト教徒」にも悪人は大勢います。だからと言って「バチカンは悪の巣窟」は誤解です。

相手が誰であれ、時の政権と信徒の間に立って苦渋の決断を強いられた時、キリストの教えに従って最善の選択をせねばならない時はローマ教会全体にも、各教区や大教区(カトリック教会の行政区分)にも、いつ、どの時代にもあります。しかし、それが「陰謀」だと言ったら、この世に陰謀でないことなど何もないでしょう。

4. 「バチカン」は今も「十字軍遠征」を企てている?

この辺りになると、もはやRPGゲームの妄想か、世界史の教科書への誤解としか思えませんが、日本人で「バチカンは十字軍遠征を今も企てている」とか言い出すネット住民の発言やHPを時々見かけます。

十字軍は、エルサレムの聖地をイスラム教徒から取り戻すという大義名分もありましたが、主に聖地の教会補修やエルサレムやカルメル山にある修道会の保護をローマ教会が望んだことが原因でした。

エルサレムにはキリスト教の「聖墳墓教会」やキリスト教関連の巡礼地とともに、ユダヤ教の聖地でもあり、イスラム教の聖地の一つである「アル・アクサ・モスク」もあります。

今は、世界のどこからでも飛行機で一っ飛びでエルサレム巡礼に行ける時代です。そんな21世紀に、徒歩で欧州からエルサレムを目指す物好きが隊商を組めるほど大勢いるとは思えません。

中世の頃、大航海時代以前には、大規模な隊商を組まないと治安上の問題があり、地中海を越えて中東には渡れなかったから十字軍遠征を望んだ貿易商人らがいた、ということです。

実際、イエズス会の創始者、ロヨラのイグナチオの初志はエルサレム巡礼でしたが、治安上の問題で叶わず、新しい宣教会の設立を目指す方に方向転換したため、イエズス会がいまもあるのです。

5.「バチカン」と日本のクリスチャンは違う?

最近は、信教思想の自由という憲法の定めをオギャーと生まれた時から教わった世代が日本社会を牽引しているせいか、「バチカン」は陰謀集団だけど、日本のクリスチャンは「稀にいるが、陰謀集団とは関わりない」と真面目に主張する右派の方々がいるようです。

日本のカトリック信徒は総人口の0.3%ぐらいです。現在、増えているのは主に日本に永住するフィリピン系、ベトナム系カトリック信徒らとその子孫です。

ほとんどの日本人は「マジでカトリック信徒に遭遇」した経験がほぼないため、「バチカンは陰謀集団で…」などと言っても誰にも実害はないと思い込んでいるようです。

「旅の恥はかき捨て」と似たような無責任な感覚なのかも知れません。

そんなある日、ネット、またはリアルの知り合いの誰かがカトリック信徒やクリスチャンだと言うことを知ってしまったとしましょう。

するとバツが悪いので、「バチカンは悪いけど、日本のクリスチャンは悪くない」などと言い出すのです。

よく知らないのに、内輪で悪しざまにののしるような言動をネット上でしてしまい、あとで後悔…ということはよくあります。

実際はなにも知らないのに、やたら陰謀だ、悪の巣窟だとキリスト教へのヘイト発言するのは、つつしむべきだとしぇるりんは思います。

あなたの陰謀説をマジメに受け取った誰かが、当たり前に子どもの頃からキリスト教の教会に通う誰か、当たり前にクリスチャンでいる誰かを傷つけているかも知れません。

あなたが葬式仏教徒なら、「ミャンマーのロヒャンギャ虐殺をする人々と同じ仏教徒なのか?」と誰かに訊ねられたらどう感じるか、いちど考えてみてください。

知らない人には、日本の葬式仏教徒も、ミャンマーで虐殺行為を行う上座仏教徒も同じアジア地域の仏教徒にしか思えないかも知れません。

その時、あなたがどれだけ傷ついた気持ちになるかを思いやれるなら、バチカン陰謀説のようなトンデモ論に惑わされずに済むでしょう。

よい一日をお過ごしください。

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