四旬節第五主日2021:　オトナのための「天地創造ものがたり」：父母と離れて結ばれる男女

主なる神が彼女を人のところへ連れて来られると、人は言った。

「ついにこれこそ

　わたしの骨の骨

　わたしの肉の肉。

　これをこそ、女(イシャー)と呼ぼう。

　まさに男(イシュ)から取られたのだから。」

こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、

二人は一体となる。

人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。

(創世記２:22後半抜粋～24)

お元気ですか。ご無事ですか。しぇるりんです。

世界的な季節要因もあり、一見、減少傾向に見える新型コロナ禍。実際には、この時期に「感染者ゼロ、新型コロナ専用病棟と人員の確保、市中感染の捕捉のための社会的PCR防疫検査、無症状陽性者の隔離、給付、治療」が行われなくてはなりません。

ロイター通信によれば陽性者数は「八割減」とあります。

実際は、ツイッターには「ダンナは新型コロナ陽性なのに、妻子は濃厚接触者じゃない？から、保健所の検査対象にはならない」などの書き込みが目につきます。

つまり季節性要因で八割減、は感染拡大の要因は減っていないということです。

キリスト教の教会で神さまからいただいたたった一つのいのちを大切にする「パンデミック」認識と、日本政府の「他に対策がないから…口先だけ緊急事態宣言」がもたらす社会的な弊害によるパンデミック認識。

この乖離は、教会のメンバーと外の社会のパンデミック認識に分断をもたらしかねません。時代の認識の分断は、結果として「家庭内の信仰の自由」をおびやかす恐れがあるからです。

「ただの風邪に世界が大騒ぎをしている。馬鹿らしい。」と無自覚のうちに考える人が日本でも確実に増えました。

結果として、大都市の街中やショッピングモールの人出が以前より昼間に集中して増加しているようです。

日本では政権与党の「オオカミ少年効果」に飽きた人々が、半ば無自覚に「どうせ、政治家、大企業と官僚の言うことはウソなんだ」という受け止めるのも危険です。

このままだと、WHOや諸外国の対応も「みんなウソだ。COVID-19にかかる奴は、宝くじに当たるぐらいの確率のことで大騒ぎしているだけだ。」と思い込む人が増えます。

スペイン風邪も「スペイン風邪の危険に慣れっこになってしまった」二年目以降の方が死亡者数が増加しました。人間は、病いも死も戦争もいじめも、「慣れれば日常生活だと思い込んでしまう」恐怖への適応も可能だからです。

イタリアは現地時間で3月15日～ロックダウンに入りました。四旬節第五週～復活節は巡礼者と旅行者の増える時期だからでしょう。すでに、隣国のスペインでは米国などからの旅行客が増えています。

必要な公助は今後とも求め、徹底したPCR検査と隔離で合理的に感染拡大リスクへの根本的な対策が必要です。

「ひとりの感染は、全国の感染」というニュージーランドや台湾のような政策ができるよう求め続けましょう。

さて、本日の「オトナのための天地創造ものがたり」は「男と女」。ジェンダーギャップ問題が深刻な21世紀に、この物語はわたしたちに何を語りかけるのでしょうか。

男と女の出会いとは？

「主なる神が彼女を人のところへ連れて来られる」ことで、「人」は「彼女」に初めて出会いました。

ここでいう「人」は一応、「男」を指します。以前の版では「男が女に…」と書かれていた部分は、ジェンダーフリー思想の普及により、「人」と「彼女」に変わったのです。

神が彼女を人のところへ連れて来るまで、「人」は彼女を知りませんでした。この部分は、どうも現代の男女間のジェンダーギャップ問題を彷彿させます。

女性が何を考えているのか、正面から受け止めようとしない男性が21世紀にはむしろ増えているようです。女性の心身を破壊するような悪行を行う男性が、増えています。

その背景に、人間として未熟なオトナの激増が挙げられるでしょう。

日本社会であれば、明治維新以降、にわか儒教国家を気取った家父長制の弊害から発生したDV被害と夫の浮気に泣き寝入りする妻たちが母となり、離婚する勇気の有無にかかわりなく息子に「理想の夫像」を求め、息子は母と共依存となります。

息子は幼くして「母の理想の夫」を演じるために追い詰められ、そのストレスのはけ口を幼女や若い女性に求める悪循環が社会問題として顕在化しつつあります。

天賦人権や基本的人権に「ジェンダーフリー」が盛り込まれてから、女性は積極的に男性の暴力に対し声をあげられるようになりました。

奇しくもイギリスで現職警官が拉致、監禁し、殺害したサラ・エヴァーランドの事件を受け、ハッシュタグ# NotAllMenButAllWomen(すべての男性が加害者ではないが、すべての女性が被害者だ)が英国を中心に拡散しています。

捜査地域での「女性の夜間外出自粛要請」に対し、「外出自粛すべきは男性」という声が上がっているのです。

《創世記》の最初の人は、「ついにこれこそ、わたしの骨の骨、わたしの肉の肉。これをこそ、女(イシャー)と呼ぼう。

　まさに男(イシュ)から取られたのだから。」と女との感動に満ちた出会いをしました。

人は、天地創造の初めの時から悩み続けた孤独からの解放宣言をしたのです。

原罪にまみれ、十戒の定める罪を罪とも思えなくなった人がどれだけ増えたにせよ、「女(イシャー)と初めて出会って、天涯孤独から開放された日」の新鮮な感動の日を、男性は思い起こすべきでしょう。

男性が女性を被害者にしない、させない行動を取ること、女性が被害をうやむやにせず、声をあげることで男性に認められる時代の始まりが、新型コロナ後の選択のひとつだと思います。

痴漢、暴力を見たら、男性たちが一斉に男性加害者に対し声をあげ、被害者である女性を🫂なぐさめ被害者を社会受容する対応が、新型コロナ後の選択だと思います。

性被害者であるか、ないかに関係なく、男性も女性の人柄を受け入れてパートナーシップを築いて行く時代へと変わる必要があります。

男性が女性の人柄を知るには、まず誰であれ女性の前で気取らずに友だち付き合い出来るようになる必要があるでしょう。

いつの間に、男性が内向きシャイになりすぎて「天地創造の初めに出会い、被造物として形造られた時からの孤独感から開放された喜び」を忘れてしまったようです。

女性もまた、「天地創造の初めに、人(イシャ)が先にいてくれた」出会いの日の感動を思い起こせる日が来ることを目指しましょう。

性被害に遭っても告発できない女性は、世界中に多いと思います。そういうしぇるりんも、若いころに性被害に遭った経験があります。

だからこそ、被害女性、加害男性の負の連鎖を断ち切るためにもジェンダーギャップの解消は倫理道徳で「良い、悪い」と言っても解決できない、深い問題だと思うのです。

性による加害と被害の連鎖が、男性と女性の信頼関係を破壊し尽くさないためにも、おたがいの違いへの尊厳を新たに発見できるようになりたいですね。

男は父母を離れて女と結ばれ二人は一体となる

ここで突然ですが、「婚姻の由来」が明かされたことに論理が飛躍します。

「人(イシュ)」と「彼女(イシャー)」は、神にかたち造られた被造物であり、父母はいません。

「こういうわけで」というのは、「天地創造の初めに、神ご自身が塵から造られたいのちだから」、父母から生まれた後の世の男は、父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる、という意味のようです。

両親との葛藤、新型コロナ禍では児童虐待行為が危機的な状態になっています。父母に傷つけられた心身が「父母を離れる」ことは、とても困難でしょう。

人によっては、両親による児童虐待で生涯癒えない傷を負うからです。

この困難さを超えるカギは、「人は本来的に神とともに在り、ひとり孤独な存在である」といういのちの本質を受け入れることなのかも知れません。

ひとは誰も、何らかの父母から生まれますが、死の時はただひとりです。

「希死念慮」という精神疾患の症状があります。「ただ、死をのぞむ一念に囚われてしまう」症状です。だからと言って、別に自殺を企てるわけじゃないです。

リストカットすると「スッとする」という事例もありますが、リストカットをする人には「今、リスカしちゃったんだ」と電話する友だちや知り合いがいます。孤独ではないと確認するために、リストカットするのです。

本当に孤独なひとは、リストカットも自殺企図もしません。自殺企図ですらある意味、「自殺すれば、XXに死後に復讐できる。抗議のメッセージが届けられる」という意味合いが強いひとの方が多いでしょう。

生きることに絶望して…はいまの経済苦だけでなく「将来を生き抜ける自信がもてないから」という意味合いが強いと思います。

「人」は男女の区別に関係なく、将来に希望をもち、互いへの信頼関係を築けるという望みが必要です。

人が信じられる、神が信じられるという望みへの渇望は、《創世記》が書かれた時からの「理想」です。

「理想」ですから、現実は理想通りにはなってないよね…も《創世記》の伝承者の頭の中では折り込み済みだったのでしょう。

この世はどこの、どの時代であれ理想通りにはなりません。だからこそ、「できる限り希望のある社会づくり」が求められているのでしょう。

うそ偽りで上塗りすれば、誰かが希望を失い、命を落とします。真実は苦いけど、うそより信頼をもたらす分マシだと言えます。

「父母と離れ」とは、物理的、経済的に自立した生活を送るだけでなく、男と女がひとつの共同体として一体になれるよう真面目に祈れることかも知れません。

ホントは互いに理解し合えてないことが多くとも、「父母と離れて、二人は一体になる」ことが必要でしょう。

「子はかすがい」で、夫と妻という男女の関わり合いではなく、子どもの「お父さん、お母さん」になりがちな夫婦が多いでしょう。

神さまの前で「男と女は一つに結ばれる」という誓いを生きる可能性はあるのか、いま再び考え直してみてはどうでしょうか。

どうか、ご自愛ください。ご無事で。

３月１４日（日・主・紫）　四旬節第４主日

第一朗読: 歴代誌下36章14－16，19－23節　

答唱詩篇:　28（詩編137・1＋2，3＋4，答5＋6）

第二朗読: エフェソの教会への手紙2章4－10節

詠唱: 260（第4主日Ｂ）（ヨハネ3・16）

福音朗読: ヨハネによる福音書3章14－21節

３月２１日（日・主・紫）　四旬節第５主日

第一朗読: エレミヤの預言31章31－34節　　

答唱詩篇: 6、7（詩編51・3＋4，12＋13，14＋15）

第二朗読: ヘブライ人への手紙5章7－9節　

詠唱: 262（第5 主日Ｂ）（ヨハネ12・26）

福音朗読: ヨハネによる福音書12章20－33節

(カトリック中央協議会《教会暦と聖書朗読2021年B年》より引用しました。)

動画配信情報(3月16日午後時点）：敬称ほぼ略

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カトリック東京大司教区

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「週刊大司教第十九回四旬節第四主日」

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